青天、哉。
頼人はどうして小説なんか書きたいと思ったのだろうか。
それを知るには、私と頼人の絆はあまりにも脆い。
でも今こうして、私も同じように小説を書いていて思う。
きっと頼人には、何もなかったから。
何もなかったから、小説を書くしかなかったんだと思う。
頼人は、何でもできた。
やろうとすることは、大抵できた。
いわゆる器用貧乏というやつで、しかしやはりどれも大成しなかった。
どれか一つのことに絞るというのが、できなかったんだと思う。
小説なんか、誰でも書ける。
書こうと思えば、誰でも。
そして、100人いて、1人でも面白いと思ってしまえば、それだけで、成り立ってしまうものだと思う。
芸術って、きっとそういうものだと思う。