青天、哉。
私がお風呂から上がると、頼人は、タバコを吸っていた。
「やめたんじゃなかったの?」
驚いて聞くと、頼人は、
「ああ。でも、書くためだから」
と言って、紫煙を、天井に向けて吐いた。
「書くためなら、禁煙もやめるんだ?」
「なんだってやるって言っただろ?」
「ねえ」私はスウェットの紐を払い除けて、頼人の前に座った。
「どうしてあなたはそこまでして、書くの?」
「さあな」と言って、また天井に向けて吐いた。
「書きたいから書くんだよ。苦悩しながらね」
「書きたいのに苦悩するの?」
「その方が生きてるって実感があるだろ?」
「わからない」と私は正直に答えた。
「私にとって、生きることって、認めてもらうことだから」
存在を、認めてもらうことだから。