青天、哉。
搬送先の病院で、女の子の家族からこれでもかというほど、感謝されて、狼狽した。
「実際、私は何もしてませんから」
という真実の言葉も、謙遜として伝わって、いよいよ気まずい。
病院を出ると、陽が沈み始めていた。
その陽に、女の子の家族から断りきれなかったタクシー代、1万円札を透かしてみる。
「私のバイト代、1日分よりも多い」
それでもバイト1日分の疲労感を完全に勝っていて、この日、私は初めてバイトを休んだ。
もらった1万円札は、その日の日記帳のページに挟んでいる。