青天、哉。




頼人が、年明け前に書き上げた小説。


それを読んだ時、私は初めて頼人の境地に近づけたような気がする。


胸に蝶のタトゥーを入れた主人公。


一軒のボロアパートで、売れない作家と同棲生活を送る。


結末は、線路に落ちた酔っぱらいを助けようとして、死んでしまう。


アゲハのことだとすぐにわかった。


そして、アゲハのことだってわかると、私の身体中から感じたことがないものが溢れ、頭がクラクラとした。


「ここまでして、死にたがってるの?」


と思わず聞いてしまった。


「ここまでしなきゃいけないんだよ。まだ、足りないくらいだ」と頼人は廃人のような目で言った。


「まだ、だ。まだ。こんなもんじゃない」


目が血走っていた。


ああ、このままだと、私はこの男に殺されてしまう。


でも、逃げることはできなかった。


もし、ここでちかげの言うように戦ってしまうと……私は、もう、私でいられなくなる。


なんて、おそろしく、なんて偉大。


実のところ、怖いのか、嬉しいのか、わからなかった。


怖いくらいに、私は青葉頼人が好きだった。



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