青天、哉。
青葉頼人の葬儀の日、ちかげは泣かなかった。
いや、死んでからもまったく泣かなかったんだと思う。
まるで、こうなることを予見していたかのようだった。
殺された私も、もちろん泣かなかった。
殺されて、全く別の私になってしまったのだから、当然といえば当然かもしれない。
それどころか、全く知らない赤の他人の葬儀に、なぜ参加しているのか。
「不思議な感じ」
と思わず、祭壇に向かって呟いていた。
私が知らなかった「青葉頼人」という名前。
そして、また知らない名前を、知らない坊主によって付けられた男。
この男は一体どうやって死んだのだろう。
今考えても、わからない。
自殺だったのか、読者によって殺されたのか、それとも偶然なのか、必然なのか。
私は知っているはずだった。
でも、知らないで、今こうして書き記している。
知らない。本当に知らないのだ。
でも、死んだという事実、そして死んだこの男に、私は殺されたという事実は変わらない。