青天、哉。
女の子が倒れていた路地を、チェーンが外れた自転車を押しながら歩いていると、前から男の人が歩いてきた。
左手にイカ焼き、右手に缶ビールを持ち、左右にふらふらと、まるでエルヴィス・プレスリーみたいに、歩いてきた。
「いい御身分ですね」と私は頼人に皮肉を込めて言った。
「平日の昼間からビール片手にイカ焼きで、Hound Dogですか。目の前の、チェーンが外れて困っている女子高生は無視ですか」
「あいにく」と言って、頼人はゲップをした。
「両手に花なもんでね。それに俺は子供が嫌いだ」