運命の人



試写会の会場の隅で映画を見させてもらった。

一言で言うならば“打ち震えた”

映画のストーリーが良いのは、もちろんのことだが、主演の2人の声が凄く良い。

洋次郎の作った楽曲も良い。

洋次郎と言うのは、この映画の楽曲を全て担当しているアーティストで俺の友人の1人だ。

普段はグループで活動しているが、俺は敢えてボーカルの洋次郎だけを呼ぶ笑。

名前で呼びすぎて苗字は忘れた笑。

主役は新田と、相手役の主役はまだ未成年の女の子らしい。

顔も名前も知らない女優だが、その声に“一目惚れ”した。

“声に”一目惚れは、おかしいか?

何とも言い表せない、今までに抱いた事の無い感情だった。

試写終わりに新田が、感想を聞かせてくれと、せびりに来る笑。

『健先生!どうでした?どうでした?』

『凄い、良かったよ』

『やったぁ♫』

素直に喜ぶ、こいつが可愛い笑。

『なぁ…?』

『はい?どうしました?』

『お前の相手役の声の人にも挨拶できないか?』

『萌音ちゃんに?楽屋に居ると思いますよ。行きますか?』

『あぁ。』

さらりと“萌音ちゃん”と呼んだ新田の後を歩き、楽屋まで連れて行ってもらった。

新田が声をかけると中から映画と同じ、可愛らしい透明感のある声が聞こえた。

どんな人なんだろう?と内心ドキドキしながら廊下で待つ。

新田が俺を紹介してくれて、楽屋へお邪魔させてもらった。

一目、見て映画の感想を伝えた。

田舎から出てきたばかり、という感じの初々しい女の子だった。

初めは、キョトンとしていた、その子も俺を見るなり誰か分かった様で、丁寧に対応してくれた。

これで未成年だとは……。

俺は惚れやすいのだろうか?

声だけでなく、見た瞬間にも惚れた。

正真正銘の“一目惚れ”ってやつだ。
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