運命の人
新田と共に天堂さんの楽屋を後にして、事務所の送迎車で家まで送ってもらった後。
“天堂さん”について色々と調べた。
家族構成、生い立ち、デビューのきっかけ、好きなもの、苦手なもの色々だ。
所属事務所が大手という事もあり、個人的なデータを見るのは難しいけれど、ネットに上がっている情報を、いくつもいくつも読み漁った。
俺と違って、どの記事もクリーンなものばかりだった。
『へぇ…。妹さんが居るのか』
パソコンを見ながら一人、呟いた。
それから暫く経って事務所でスタッフが打ち合わせしているのを偶然に聞いた。
“天堂萌歌が歌手デビューをする”
“その楽曲提供を誰にするか迷っている”
俺はスタッフに洋次郎は、どうかと勧めた。
そして、こっそり洋次郎に連絡をして、楽曲の提供を頼んだ。
スタッフはダメ元でのオファーだった様だが、洋次郎側が、あっさりと承諾した事に驚いていた。
天堂萌歌(てんどうもか)も姉に似て、透き通る歌声だった。
その頃、日本に嵐を巻き起こしていたアイドルグループの1人。
“キング”と呼ばれる俺の友人の主演映画の主題歌として、天堂萌歌は自身の名を隠して歌手デビューを果たした。
映画は…まぁ、あれだったが、主題歌は凄く良かった。
洋次郎の歌詞に、天堂萌歌の透き通る声。
耳ごごちが良かった。