氷の王子はクラスでぼっちな私の抱き枕になりたいらしい~クールな御曹司の溺愛が熱くて甘くて困惑中~
第2話 無理しちゃったの?
〇高級マンション最上階にある怜の家の寝室(朝)
宝「ん……」
体は横向きで寝たまま、目を擦りながら眠そうに瞼を開ける宝。
しかし次の瞬間、目が飛び出しそうになるくらい驚いてしまう。
宝(広っ!?)
自分が寝ているベッドの大きさに驚愕する宝。
その大きさは、デデーン、とワイドキングサイズ以上。
宝の両隣には弟の尊と匠が寝ているが、それでもかなりのスペースが空いている。
宝(そうだった、昨日は氷劉くんの家に泊めてもらって――)
〇(回想)昨日の夜の記憶
怜「俺を抱きしめて寝てほしい」
ほぼ無表情なのに色気を纏っている怜の顔。
怜「可愛いね、妃芽さん」
初めて見た怜の微笑み。
(回想終了)
怜のセリフと表情が頭に浮かんでしまい、ボンッ、と宝の顔が赤くなる。
宝(まぁ結局、尊と匠がいたから氷劉くんを抱きしめてなんていないんだけどね……)
目を閉じて、ふっとため息をつく宝。
その脳内には、ベッドの上で宝の両脇にガッシリとしがみつくようにして眠る尊と匠の姿と、その三人から距離をあけて同じベッドで目を瞑っている怜の姿が浮かんでいる。
宝(ところで氷劉くんは……)
宝が周りを見回すが、寝室内に怜の姿はない。
その代わりにベッドの頭の所に置いてあった時計(9時40分)が目に入る。
宝(ぇぇっ、もうこんな時間!?)
宝は急いでベッドをおりるが、尊と匠はまだ目を覚まさない。
宝(今日が土曜日でよかった……ッ)
〇高級マンション最上階にある怜の家のリビング(朝)
おずおずとリビングの扉を開けながら声をかけるシンプルなポロシャツとジーンズ姿の宝。
宝「おはようございます……」
一郎「ぁ、おはよう妃芽さん」
三人掛けのソファに座っている一郎が、宝を見て優しい笑顔を向ける。
宝(山田くん、来てたんだ……)
一郎の服装は、男子高校生らしいカジュアルなシャツとチノパン。
怜「おはよう」
一人掛けのソファに座っている怜は、コーヒーを飲んでいて視線は宝の方を向いていない。
怜の服装は少し大人びたシックな雰囲気。
宝「氷劉くんも山田くんも、昨日は本当にありがとう」
怜「もう新聞配達のアルバイトには行かなくていいよ」
宝「ぇ……?」
キョトンとした表情を浮かべる宝。
怜「昨日のストーカー男について少し調べさせてもらった」
怜の言葉の意図がよく分からず戸惑う宝に、安心させるような笑みを一郎が向けた。
どうぞ、と一郎がソファの隣の席をすすめ、宝はちょこんと腰をかける。
一郎「あの男がいる職場に行くのは嫌でしょ? 今朝円満に妃芽さんの退職手続きは済ませてきたからもう行かなくて大丈夫だよ」
宝「ぇ、本当に? 円満にってどうやって?」
宝(バイトとはいえ、突然で円満に辞められるものなの?)
怜「祖父に協力を頼んだ」
一郎「氷劉グループならどんな会社でも何かしらつながりがあるからね」
宝「ぁ、でも、私が急にやめたりしたら他の人の負担が増えて迷惑をかけてしまうかも」
ハァ、と呆れたように怜がため息をつく。
怜「こんな時まで他人の心配するなんて、人が良すぎ」
一郎「それも怜が何とかしてくれたから大丈夫だよ」
怜「祖父の所の用心棒を何人か融通してもらっただけ、俺は何もしていない」
宝「用心棒……?」
宝の頭にクエスチョンマークがたくさん浮かぶ。
怜「妃芽さんの代わりに厳つい男を数名送り込んだ。配達の人手はかえって増えたはず」
一郎「それにその人たちなら、今後あのストーカー男が悪さしないか見張る事もできるし」
深々と宝が頭を下げる。
宝「何から何まで本当にありがとう。ごめんね私、自分の事なのに何もしないで」
怜「別に気にする必要なんてない」
一郎「そうそう」
宝「こんな風にサラリと人助けができるなんて、ふたりとも本当に凄いね……」
ほぅ……、と小さく宝がため息をつく。
一郎「僕は凄くないよ」
少し悲しそうに一郎が笑った。
一郎「僕は怜に言われた事をしただけ。何でもできる怜と違って、僕は平凡な人間だから」
宝「平凡……」
一郎「ほら名前も山田一郎って、習字の見本とかによく書かれてそうな名前だし」
ハハ、とおどけたように一郎が悪戯っぽい笑みを見せた。
宝(私も前は自分の事を平凡だと思ってた。平凡でつまらない、なんて。だけどお父さんとお母さんがいなくなって初めて、平凡な毎日がどんなに尊い事だったのか痛感した)
宝「平凡な人って、それぞれ大切で特別な存在だと思う」
一郎「ぇ?」
宝「だから平凡な山田くんは凄い。自信もっていい」
力を込めて断言した宝の方を、意外なものを見るような表情で怜と一郎が見つめていた。
その視線を感じて気恥ずかしくなった宝が、ふしゅぅぅぅぅ……、と萎んでいくように恐縮して赤面する。
宝「って、なんか偉そうなこと言っちゃって、ごめんなさい……」
一郎がニコッと笑う。
一郎「ありがとう、そんな風に言ってもらえたの初めてだから嬉しいよ」
宝(こんな生意気な事を言っても怒らないで微笑んでくれるなんて、やっぱり山田くんは太陽の王子様だ……)
尊敬の眼差しで一郎の事を見つめる宝。
そんな宝と一郎を怜はほんの少し眉を寄せた硬い表情で見つめていた。
〇高級マンション最上階にある怜の家のリビング(昼頃)
リビングのローテーブルの所でラグの上に座って、おにぎりを食べている尊と匠。
小さめのお皿にブロッコリーとミニトマトとウインナーが盛られたものが、尊と匠の前にそれぞれ置かれている。
三人掛けのソファに座っている宝と一郎と、一人掛けのソファに座っている怜は既に食事を済ませたので今は何も食べていない。
尊「ごちそうさまでした」
匠「ごちそーしゃまれした」
尊と匠が手を合わせて挨拶をする。
ふたりが使った食器をカウンターキッチンで洗う宝。
怜と一郎と尊は先ほどの位置で座っていて、匠は尊の肩につかまって立っている。
リビングから尊が宝の方に向かって話し始めた。
尊「宝ねぇ、今日はこのあとどうすんの?」
宝「できたら明日からに備えて料理の作り置きをしておきたいな。氷劉くん、キッチンを借りても大丈夫だったりする?」
怜「構わないよ」
特に関心が無さそうに、スマホを見ている怜は顔も上げずに答える。
匠にもしゃもしゃ髪をいじられている尊が、再び宝に声をかけた。
尊「それなら明日は約束通り遊園地行こうよ」
宝「約束って、なんのこと?」
尊「俺の誕生日の時、行きたいって言ったら宝ねぇがしばらく無理って言ってただろ」
宝「うん」
尊「だから俺、1か月も待った。春休みだってどこにも行ってないし、行こう」
宝(ぅ、確かに春休みはお父さんの一周忌法要の準備もあってどこにも連れていってあげてないけど……)
宝「尊が乗りたい乗り物は、まだ中学生以上の付き添いが必要なの。でも匠がいるから私は付き添いできないでしょ、だから尊がひとりで乗れるようになるまで遊園地は無理」
尊「俺がひとりで乗れるようになるのって、いつ!?」
宝「身長130センチ以上だから……あと一年くらいかなぁ」
宝の言葉を聞いた尊が、駄々をこねるように両腕を振りながら抗議する。
尊「そんなに待てない! 俺いっぱい我慢したもん、遊園地行きたい、遊園地!」
匠「ゆーえーち、ゆーえーち」
尊のマネをしている匠は、手と腰を可愛く振っていてまるで踊っている感じ。
宝(ど、どうしよう。こんな会話聞かされて氷劉くんイライラしてないかな。遊園地とか興味ないみたいだから)
〇(回想)怜が華やかな女の子たちから話しかけられているシーン(第一話に出てきたのと同じ、宝が校内で見かけた記憶)
女生徒2~3人「氷劉くん、今度の休み一緒に遊園地へ行こうよ」
怜「興味ない」
無表情でバッサリと断っている怜。
(回想終了)
宝(もう一人誰かいればいいけど、遊園地へ一緒に行ってくれるような友達、高校にはいないし)
『ぼっち』という矢印が頭に突き刺さっているような錯覚に陥る宝。
そんな宝へ微笑みながら一郎が提案する。
一郎「明日、僕でよければ一緒に行こうか?」
宝(山田くんって、太陽の王子様で神様……?)
一郎の姿が、救いの手を差し伸べてくれた神様のように宝には神々しく見えた。
宝「いいの……?」
怜「イチは塾があるだろ。俺が行くよ」
クールな表情で一郎へ告げた怜に対して、宝が目を見開いている。
宝「ぇ、氷劉くんが!?」
宝(遊園地に興味ないって言ってたのに!?)
怜が宝の方へ視線を向けた。
怜「俺じゃ不満?」
宝「不満なんて無いよ」
ブンブンブン、と首を横に振る宝。
怜「じゃ、そうしよう。明日イチは塾に行きな」
一郎「わかった。そうさせてもらうよ」
怜「ああ」
宝(ぁ、そうか、遊園地には興味ないけど山田くんに塾を休ませたら悪いから自分が行くって気をつかってくれたのかも、氷劉くん)
優しい……、と宝は思った。
〇高級マンション最上階にある怜の家の玄関
一郎を見送るために怜は玄関に立っている。
(宝は匠のトイレのお世話をしているためいない。尊はリビングでテレビを見ている)
靴を履いている一郎に、怜が話しかけた。
怜「今日は朝早くから悪かったな。助かったよ」
一郎「いいよいいよ、怜にはいつも助けてもらってるし。それに怜が僕にお願い事をするなんて珍しいからね、たまには恩返ししないと」
怜「それじゃまた、月曜に学校で」
靴を履き終えた一郎が、怜の顔をジッと見つめている。
その視線に気が付いた怜に向かって、真剣な表情で一郎が問いかけた。
一郎「明日の遊園地、一緒に行く相手が妃芽さんじゃなくても怜が行った?」
その質問に怜は自分でも答えが分からず、黙り込んでしまう。
一郎「平凡が特別で凄いなんて、初めて言われたよ。いいこだね、妃芽さんって。今度塾が無い日にデートへ誘ってみようかな」
一郎の言葉を聞いた怜が、ほんの少しだけ目を見開いて驚く。
怜の表情を見て一郎が、ニコ、と微笑んだ。
パタパタパタ……と急いだ感じで宝が玄関へやって来る。
宝「ごめんね、匠が急にトイレ行きたいって言いだして。山田くん、昨日も今日も本当にありがとう」
一郎「気にしないで。でも、ひとり暮らしの男の家に住むなんてやっぱり心配だな。どうする妃芽さん、うちなら姉も妹もいるし狭いけど僕の家にくる?」
宝「ぇ、と……」
なんと答えていいのか分からず怜と一郎の顔を交互に見る宝。
無表情のまま、怜が一郎に答える。
怜「妃芽さんの弟も一緒にいるんだから、男とか女とか変な心配しなくていい」
宝の脳内で、小人のような姿の宝がポンと手を打って納得したような表情をしている。
宝(そっか、氷劉くんは私のことを女として見てないんだ。だから抱きしめて寝てほしいなんて気軽に言えるのかぁ)
一郎「だったらいいけど。それじゃ、また月曜に」
これまでの爽やかスマイルと違い、一郎は挑発するような笑みを浮かべた。
〇遊園地(日曜日の昼間)
遊園地へ入園し、尊が園内を眺め目をキラキラ輝かせている。
尊「ジェットコースター乗りたい。あと、水にザブーンって落ちるのも」
はしゃぐ尊に対して、宝は恐縮した様子。
宝がおしているベビーカーで、匠はスヤスヤと寝ている。
宝「ごめんね、ベビーカー借りる手続きまでしてもらっちゃって」
怜「別に……その方が楽かなと思っただけだから」
宝「それに遊園地代も……」
怜「投資してる会社の優待があっただけ。気にしなくていい」
尊がジェットコースターを指差しながら、くぃ、と怜の手をひっぱった。
尊「あれ一緒に乗ろーぜ!」
怜「俺と?」
チラ、と何かを気にするような感じで怜が宝の方を見た。
ベビーカーにいる匠はまだ寝ている。
宝(きっと男の子って、絶叫系のアトラクションとか好きだよね)
宝「私と匠の事は気にしないでふたりで楽しんできて。あとでヒーローショーのステージがあるベンチで待ち合わせしよう」
絶叫系のアトラクションに乗る怜と尊、起きた匠とコーヒーカップに乗る宝。
しばらく時間が経過して、このあとヒーローショーが行われるステージのベンチ席(最後方の真ん中通路側)に座っている宝と匠。
そこへ笑顔の尊がやってきた。
尊のうしろから怜が歩いてきている。
尊「怜にぃとグルグル回るジェットコースターの乗ってすっげー楽しかったー!」
宝(怜にぃって……いつの間にか尊がすごい懐いてる……)
尊「怜にぃ、怜にぃ、次はビヨンビヨン動くやつ乗りにいこーぜ!」
怜「……いいよ、行こう」
宝(ん?)
宝は怜の様子に、ふと違和感を覚えた。
怜の表情がほとんどないのはいつも通りだが、顔色がほんの少しだけ悪い。
尊に続いて歩き出そうとした怜の腕を咄嗟に掴む宝。
宝「氷劉くん少し休んで」
怜「ぇ……」
宝「尊、このあとヒーローショーがあるから匠と一緒に前の方のキッズエリアで見ておいで」
尊「ぇ、ほんと? 匠、行こーぜ」
尊と匠が手をつないでステージ前方の小さな子ども専用エリアへ移動する。
ミネラルウォーターのペットボトルを開け、宝は隣に座る怜に渡した。
宝「もしかして氷劉くん、絶叫系の乗り物苦手だった?」
怜「……初めて乗った」
宝(尊が喜んでたから、無理しちゃったのかなぁ)
怜の顔色は、まだ少し悪い。
宝「寄りかかった方が楽だったら、私に寄りかかって大丈夫だよ」
怜「ぇ……いいよ、周りに人がたくさんいるし。妃芽さんだって恥ずかしいだろ」
体調が悪いのにそんな風に言う怜に対して、宝は少し怒った口調で告げる。
宝「体調が悪い時に周りの視線なんて気にしないの」
ぎゅむッと怜の頭を自分の肩へのせる宝。
怜「……具合い悪くなってごめん。絶叫系の乗り物が苦手なんて格好悪いよな、俺」
宝「いいよ格好悪くて。つらい時はつらいって言ってほしい」
宝の言葉に、少しだけ目を見開く怜。
大丈夫大丈夫、と言って匠をおんぶして重い買い物袋を両手に持ち笑顔だった母を思い出している宝。
宝「言ってくれないと分からないし、つらいって言ってくれれば私が助けるから」
怜「……妃芽さんって、かっこいいね」
宝の角度からは見えないけれど、宝の肩へ頭をのせている怜は目を閉じ穏やかな笑みを浮かべていた。
〇遊園地からの帰り道(夕方)
宝、匠、尊、怜の四人が、この順番で手をつないで歩いている。
尊「楽しかったー!」
宝「氷劉くんごめんね、後半はずっと匠の相手をしてもらっちゃって」
(回想)ジェットコースターなど絶叫系の乗り物を楽しむ宝と尊、汽車など小さな子ども向けの乗り物に乗る怜と匠(回想終了)
尊「そうだった。怜にぃ、ごめんなー」
匠「れぇにぃ、ごめにゃー」
宝と尊と匠は申し訳なさそうな表情。
三人とも俯いているから、怜の表情は見えない。
怜「別に謝らなくていい」
尊「また一緒に行ってくれる?」
怜「いいよ。また一緒に行こうな」
尊・匠「「うん」」
宝(ぇ、また一緒に行こうなって言ってくれた!?)
怜の言葉に尊と匠は嬉しそうな表情で笑い、宝は口をポカンとして驚きの表情を浮かべている。
尊「怜にぃ具合い悪かったんだって? 今日は怜にぃが宝ねぇの隣で寝ていいぞ。宝ねぇに痛いところ撫でてもらって寝ると、次の日には治るから」
尊の爆弾発言に思わずゴホッとむせてしまった宝。
宝「た、けるッ何言って……っ」
怜「そうさせてもらうよ。でも俺、毎日隣で寝たいんだけどどうしたらいい、尊?」
宝「ひ、氷劉くん!?」
尊は少し眉を寄せ上の方を見つめる感じで思案顔。
尊「んー、じゃぁ、俺と一日交替な」
匠「いちーちこーたいにゃー」
宝「一日交替ってッ」
宝は動揺して顔を真っ赤にしている。
宝がいる方と反対を向いているので表情は分からないが、笑いを堪えきれないといった様子で口元を押さえ肩を震わせている怜。
怜(可愛い……)
無意識に、怜は心の中で呟いていた。
〇高級マンション最上階にある怜の家の寝室(夜)
宝(ま、でも結局こうなるよね)
昨日と同じように、宝は尊と匠に両側からくっつかれてベッドで横になっている。
違うのは、肘を立てて手の甲を自分の頬へ当て横寝している怜が、クールな表情だがほんの少しだけ愛おしそうに三人を見つめている事。
そして昨日よりも怜と三人の間の距離が少し近い。
怜の隣(怜と宝の間)で寝ている尊は宝の腰のあたりに顔を寄せて爆睡。
匠は宝の親指を吸いながら寝ている。
宝「氷劉くんのベッド、すごく大きいね」
怜「眠れなくなってから色々試してみて、今はこうなった」
宝「そうなんだ……」
宝(眠れないのってつらいだろうな……)
怜「匠は指しゃぶりするんだね。妃芽さんの指、吸ってる」
宝「うん、お母さんが亡くなってからするようになったの。夜だけだし、安心して眠れるなら無理にやめさせなくてもいいかなと思って」
怜「安心して眠れる……」
小さく怜が呟いた。
怜「俺も夜だけ……妃芽さんの指、咥えていい?」
宝(……くわえ……ぇ、氷劉くんが!?)
宝「ぇ、ちょッ、ま、って……ッ」
制止する声が届く前に、匠が吸っているのと反対の手が掴まれ、宝の人差し指が、パク、と怜の口内に含まれた。
怜は目を閉じている。
宝「ひ、氷劉くん……ッ」
顔を真っ赤にさせた宝の声に反応して、怜がゆっくりと目を開けた。
宝を見て、やっぱり可愛い……、と内心思っている怜。
指を咥えたままの怜に流し目で見つめられ、宝の心臓がドキンと音を立てる。
宝(……これじゃドキドキしちゃって私が眠れないよー!)