婚約破棄すると言われたので、これ幸いとダッシュで逃げました。殿下、すみませんが追いかけてこないでください。

「遊んでねーよ」
「左様ですか」
「まぁ、心配はいらないとは思うが。メイドの1人が脅迫状をポケットに入れたんだと思う。よって、内通者の割り出し。ミュリアに護衛。あと犯人を捜し、王宮魔法騎士団に拘束するよう命令を出しておけ」
「しかし……舞踏会が5分後に迫っております。内通者の割り出しと犯人拘束は命令を出せますが……護衛を今すぐ手配するのは無理があります。直前に状況が変われば、城の護衛にも隙ができてしまいますし」
「ミュリアに何かあったら、どうするんだよ!!」

 マシューは黙り、少し思案したのち俺の目を見た。

「…………逆に言うと婚約を破棄なされば、ミュリア様に手は出さない……という事ですよね……」
「はっ? 俺に婚約破棄しろと? 断る!!」
「振りだけでもいいのでは? 事前にミュリア様にはお伝えしておき……まぁ、あと5分ですけど。犯人拘束後、国民に事情を公表しても良いかと。ミュリア様の御身の為の婚約破棄の振り……国民には美談となりましょう」
「いや、まぁ、うん……でも、ミュリアは辛くないだろうか? 犯人が捕まるまで婚約破棄された令嬢と噂されてしまうわけだし」

 俺は美談とかそんなのはどうでもいい。ただミュリアが心配である。

「少しの間、我慢していただくしか……」
「わかった。ミュリアにちゃんと伝言を頼むぞ。くれぐれもくれぐれも、ミュリアを傷つけないように!! 事情を分かっていても、婚約破棄なんて言われたら、悲しいに決まっている……」
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