若旦那様の憂鬱〜その後の話し〜
寝る支度を終え、2人ベッドで横になって寝る前のひと時。

柊生が帰ってから本当に吐き気が治ったようで、普段と変わらない花を見つめて途方に暮れる。
そんな柊生の気持ちを知ってか知らずか、
花はと言うと、 

「柊君に見せるの忘れてた。」
と、パッと笑顔になって思い立ったように何処かに行ってしまう。

柊生は置いて行かれた子供のように、花の行方を目で追って身体を起こし今にも追いかけたくなる気持ちをグッと抑えて待つ。

ニコニコ顔で戻って来た花は、1枚の写真を大切そうに見せてくる。

「これ、赤ちゃんのエコー写真。
この前より結構大きくなってたよ。」

柊生は思わず正座したい様な気持ちになりながら、その写真を両手で受け取りそっと見つめる。
「前よりくっきり分かるな。これ、もしかして心臓か?」

食い入るようにじっと見つめ、指でサイズを確認している。

「まだまだ小さいけど、元気に心臓が動いてたし、音もドクドク聴かせてもらったの。」

「えっ!音も聞こえるのか!ありがとう。エコー写真は年月が経つと消えてしまうらしいから、印刷しておいた方がいいらしいぞ。」

最近、経済誌よりも育児書ばかりを読み漁っている柊生の知識はどんどん増えていっている。

「へぇ、そうなんだ。じゃあ何枚か溜まったら印刷しておくね。」
花も知らなかったから感心して写真を大切そうにしまう。
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