若旦那様の憂鬱〜その後の話し〜
やっと花と目が合って、2人微笑む。

「柊君も、せっかくだからこの景色堪能した方が良いよ。なかなかこの高さからお庭を見る事なんて無いでしょ?」

「ああ、そうだな。
確かに、こんなにのんびり景色を見下ろしたのは初めてだ。」
やっとそこで柊生も庭園に目を映す。

そこに備え付けの電話が突如鳴る。

立ち上がろうとする花を制して、柊生はサッと立ち上がり電話に出る。

「はい……分かりました。今から伺いますね。」
番頭からの電話で、柊生に経理の仕事で相談があると言う。

仕事ではないが、この頃会社で忙しくしていてなかなか旅館に来れない手前、断る事も出来なくて少し顔を出し事にした。

「ごめん。花、番頭さんが仕事で分からないところがあるらしくて少し言って来る。
1人にしても大丈夫か?」

「ふふっ、ここだって家みたいなものなんだから大丈夫だよ。たまには従業員さんの愚痴も聞いてあげてね。」
花は快く送り出す。

「ありがとう。用が済んだら直ぐに戻るから、出来るだけ心配だから風呂は俺が帰って来てからにしてくれ。」
そう言い残して柊生は部屋を後にする。

花はどこまでも過保護な旦那様を笑いながら手を振って送り出した。
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