若旦那様の憂鬱〜その後の話し〜
花からぎゅっとしがみついて来てくれるから、俺も優しく抱きしめ少し気持ちが落ち着く。

「水でも飲むか?」
大人しくベッドに横になる花に寄り添い頭を撫ぜる。
こくんと小さく頷くのを確認して、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し急いで寝室に戻る。

美味しそうにコクコクとミネラルウォーターを飲む花を見て安堵して、一緒に布団の上に寝転がる。

「柊君、お疲れ様。番頭さん大丈夫だった?」

「ああ、パソコンが苦手なだけで飲み込みは早いから大丈夫だ。」

花とたわいも無い話をしながら自然と穏やかな気持ちになっていく。

「花が居なくなったかと思って一瞬焦った。」
ついさっきの出来事を思い出し、素直気持ちを露とする。

ふふふっと花は笑って、
「ごめんね。足音は聞こえたんだけど咄嗟に動けなくて、心配させちゃったね。」

俺もハハっと笑い、
「どうもトラウマになってて、いるはずの花が居ないと焦る。」
そう言って額に口付けを落とす。
目を閉じて、花の額に自分の額をコツンと合わせる。
花の心が読めたら良いのにな、とふと思う。

「もう逃げないから大丈夫。二度と勝手に居なくならないよ。」
花からの言葉を聞いてもきっと一生スッキリとは晴れないだろうけど…。

きっと花が抱えているトラウマの方が、一生花に付きまとうんだろうと思うと憂鬱になる。
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