若旦那様の憂鬱〜その後の話し〜
「花が風呂に入るって言うから心配だったんだ。体調だって万全じゃ無いのに。」

初めて入った貴賓室の内風呂は思ったよりも広く、花はヒノキで造られた風呂の片隅に逃げて手を伸ばしても届かないほどだった。

明らかにプンと怒っている花が愛しいと思ってしまうほど可愛くて、思わず笑顔になってしまう。

「…何でそんなに嬉しそうなの？私怒ってるんだよ。」
花が俺を睨む。

どんなに怒っても可愛いしか無いんだが、と俺は思いながら、

「花が俺に怒ってくれてるのが嬉しい。怒った顔も可愛い。」
信じられないと言う顔の花に近付き、横抱きにして囲ってしまう。

「ひゃっ。」
と、一生懸命に胸を隠しながら無駄な抵抗をしてくる。
久しぶりに花の柔らかな感触を楽しみながら、そっと抱きしめ頬にキスをする。

真っ赤になった花がやっとジタバタするのを辞めて、大人しくなって俺の胸に寄りかかって来るからまた可愛くて、愛しさが溢れ出す。

触れてはいけないと思いながら、自分を止める事が出来ず、その柔らかな胸にそっと手を伸ばす。

さすがに身体が反応してしまう。

「…やばい。やり過ぎた…。」

理性と本能との狭間で闘いながら、それでも自分を律して何とか花から距離を置く。

花は少し息を乱しているが俺の目を見据え、可愛く睨んでくる。

「ごめん。触れないつもりでいたんだが…。さすがにこれ以上は俺の理性が持たない。」
そう言って、自ら元いた場所に戻る。

電圧を下げなければと心を落ち着かせながら深呼吸をする。
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