若旦那様の憂鬱〜その後の話し〜

バカップル誕生

その次の日から柊生はまた弓道を始めた。

自分自身の精神を鍛える為にと始めた事だったが、せっかくならば秋にある一般成人の部の大会にもう一度出てみようと思い立ち、練習に精を出す。

秋、花は丁度妊娠5か月を迎えた。

この頃には少しぽっこりとしたお腹を隠せなくなり、保育園にも妊娠の事を伝えた。

何故か1番食い付いたのは菜摘先生で、
花が結婚している事も、柊生の存在さえも知らなかった彼女は、どこの誰に孕まされたのかと怒り、花に詰め寄り、園長に詰め寄り夕方の職員室は一瞬大パニックになる。

そこにタイミングよく現れた柊生が、

「お取り込み中のところすいません。花の旦那の一橋柊生です。」

と、爽やかな表の顔で挨拶をして、今まで内緒にしていた全てを話し、花に変わって謝罪をしてくれた。

職員1人1人に高級洋菓子を配り、花と一緒に頭を下げて完璧なまでの態度と笑顔で、あの菜摘先生までもが一言も発する事が出来ないくらいだった。

「僕の特殊な立場のせいで、彼女には生きづらい生活をさせてしまって本当に申し訳ないばかりです。彼女がギリギリまで働きたいと言う意向もあって、後3ヶ月ほど妻をよろしくお願いします。」
と、花の立場も庇い頭を下げた。

最後に、一橋旅館の食事付き日帰り温泉の無料優待券まで配り、一橋の名まで上げて颯爽と花を連れて帰って行った。

遠藤先生は『さすが、出来た男は違う。』と、ひとしきり感心し、柊生のアドバイスで帰って来てくれた妻と子供の話に花を咲かせ、『あの人ほど完璧な男はいない』と、周りの先生に言い放つ。

間柴先生も美波先生も実は知っていたんだと、自慢話のように周りに話し2人の純愛を語って聞かせた。
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