若旦那様の憂鬱〜その後の話し〜
TVをつけると、各地で起きた暴風雨の被害状況が報道されていた。

この地域では山の方で土砂崩れがあったらしい。河川の氾濫も各所で起きていた。

落雷だけで済んだのはまだマシだったと悟る。

そしてギリギリでも家に帰れて良かったと心から思った。花と今もし別々の場所に居たら耐えられない。心配でどうにかなってしまいそうだ。

花の寝顔でも見て癒されようと寝室に戻り、起こさないようそっと花の寝るベッドに潜り込む。

彼女を目に映すたび、こみ上げる愛しさは出会った頃より遥かに増し、溢れ出て今や制御不能だ。

俺のものになったと言うのに、花は綺麗に咲き誇り、いつだって誰かに奪われてしまわないかと、不安になってしまう。

これ以上綺麗にならないで欲しいとつい願ってしまうほどで…。

そう思いながら寝顔を堪能する。
彼女の寝顔は安らぎと癒しでしか無い。

「……っん……。」
しばらく見つめていると、もぞもぞと寝返りを打って花が目を覚ます。

ボーっとしていて焦点が合わない。

「おはよ、花。」

頬を撫ぜて目線を合わせる。

「…柊君…おはよう…。」

ああ、鳴かせずぎて声が掠れてしまったな…。申し訳なさに心がちくりと痛む。

「喉乾いたか?」

何か飲み物を取りに行こうと起き上がると、ぎゅっと腕にしがみついて来る。

「どうした?」

額にかかる前髪をサラッと撫ぜて、花の顔色を伺う。

「私も…起きる。」
まだ、ぼぉーっとしている頭で花が言う。

「今日はもう何もしなくて良いんだから、このままずっと寝てでも構わないんだぞ?」

むしろ朝から酷使してしまった花を労るため、今日は完全奉仕に徹するつもりの俺は、起きないでくれと心で思う。

「せっかく2人一緒に居るのに…寝てるなんて勿体無い…。」
花はそう言って体を起こそうとする。

仕方が無いから、そっと触れて起き上がるのを手伝う。

体が不安定で支えてあげないと、くてんと倒れてしまいそうだ。
「大丈夫か?腹減っただろ?
もうすぐ朝ご飯が届くからそれまで、のんびりしてればいい。」

花は俺の腕に寄りかかりながら、じっと俺を見て来るから、不思議に思って、しばらく目線を合わせて様子を伺う。
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