若旦那様の憂鬱〜その後の話し〜
「あっ、旦那様ですね。産婦人科の柴田です。」

見ると花が産婦人科でいつもお世話になっている先生がいて、柊生も何度か健診で顔を合わせていた。

「お世話になります。どうなんでしょうか?」
柊生は恐々聞く。

「今、赤ちゃんの状態をみさせて頂きました。落ちた時の衝撃で子宮口が少し開いたようで、切迫早産の危険性があります。
ただ、赤ちゃんの状態は良好ですので安心して下さい。」

それを聞いてホッとするが、切迫早産の危険性?新たな危険を知りどうしたって険しい顔になる。

「切迫早産は母体に負担がかかるのでは?」

柊生は花の事が何より心配で、
ベッドに目を閉じて横たえている花を見つめて女医に聞く。

「今、奥様ですが頭を強く打ったようで、軽い脳震盪の症状が出ています。

意識が戻らないのでお腹の痛み等の症状は分かり兼ねますが…
このまま目を覚さないような事が長く続くと母体の負担にもなりますので、帝王切開で早めに赤ちゃんを出した方が良いと思います。」

「今、取り出したところで赤ちゃんは大丈夫なんですか?」

「花さんは現在、33週目に入ります。早産にはなりますが問題はありません。」

主治医から赤ちゃんの状態、花の状態を聞き
今すぐどうこうしなくてはいけない訳では無いと分かりホッとする。

「内科の医師の診察が終わりましたら、産婦人科の方で入院になりますのでよろしくお願いします。」
そう言って主治医が部屋を後にする。

柊生は花に駆け寄りそっと声をかける。

朝、いつものようにご飯を一緒に食べた。
園まで車で送った時は変わりなく笑顔で元気な花だった。

なぜこんな事になったのか…
所在無く柊生は近くのパイプ椅子に腰を下ろし、花の華奢な小さな手をそっと握る。

なぜ、花ばかりにこんな辛い事ばかり起きるのだ。と、やるせない気持ちでいっぱいになる。
< 133 / 190 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop