若旦那様の憂鬱〜その後の話し〜
「柊君は…何で、そんなに元気なの?」
そんな俺を不服そうな顔で見上げて来る。
朝からあんなに鳴かせてしまった事を咎められてるのだろうか…。
言葉を選びながら花の表情を伺う。
「俺にとって花は栄養剤みたいなものだから、触れれば触れただけ元気になれるんだ。
無理をさせたか?悪かった、ごめん。」
素直に謝り許しを乞う。
花が首を横に振るから、ホッとして笑顔になる。
「今日は花に存分奉仕するから許して。」
「別に怒ってないよ…。
柊君ばっかり元気でずるいなって思っただけ。」
不貞腐れた顔で俺を睨んでくるから、苦笑いして頬にかかる髪を耳にかけてあげる。
「私も、ジムに通おうかな。
少しは体力つくかもしれない。」
そう言って、パッと離れて足を床に付け立ち上がろうとするから、すかさず先に立ち上がり、横抱きにしてリビングに連れて行く事にする。
「花は仕事で毎日くたくたじゃないか、そんなに体を酷使するな。
きっと保育園で子供達と遊んでいれば知らないうちに体力つくだろ。」
そう言ってソファに降ろす。
それにあまり鍛えられると、この花のふわふわした柔らかい抱き心地がなくなってしまうじゃ無いかと内心思う。
「水持って来るからちょっと待ってろ。」
冷蔵庫からペットボトルを取り出し、キャップを外すして花に手渡す。
「ありがとう。」
花は受け取りゴクゴクと美味しそうに飲む。
そこにピンポン、とチャイムが鳴る。
「あっ、朝ご飯が届いたからちょっと待ってろ。」
玄関にいそいそと行きドアを開ける。
「お待たせ致しました。朝食をお持ちしましたが、部屋に運び入れましょうか?」
「ありがとう。大丈夫、ここで受け取ります。」
無防備な花を他人なんかに晒してたまるかと、3段のケーキタワーと紅茶をワゴンごと受け取り、コンシェルジュにはさっさと帰ってもらう。
「花、朝食届いたぞ。」
ワゴンごと部屋に運び入れ、花が座るソファの前のローテーブル並べて行く。
「うわぁー。凄い、美味しそう。」
やっとここで花のテンションが上がり、いつもの感じに戻って俺はホッとした。
「どうしよ。ちょっとシャワー浴びて来るから待ってて、食べちゃダメだよ。写メ撮りたいから。」
急に元気になってパタパタと洗面所に行ってしまう。
俺は腹が鳴るのを抑え、ここでも待てを強いられるのかと苦笑いする。