若旦那様の憂鬱〜その後の話し〜
柊生はしばらく、固まり社長室の椅子から動けずにいた。
コンコンコン。
遠慮がちにドアのノックが社長室に響く。
柊生は我に帰り返事をする。
「はい。どうぞ。」
「失礼します。社長、本日の業務は終了しました…。」
秘書の永井がそう言って部屋に入って来る。
「…ああ、もう帰っていい。俺も直ぐに終わる。」
刑事からの話を聞きたいだろうに空気を読んで永井は聞いては来なかった。
「容疑者が分かった。俺の高校時代の同級生だ……。」
「一方的な私怨が何かですか?」
永井は1言えば10分かる男の事だ、全て語らなくてもお見通しのようだ。
「花にどう伝えるべきか…。」
「ありのままを伝えれば良いのでは無いでしょうか?
社長が負い目を感じる必要は無いと思います。」
「俺が適当にあしらったのがいけなかったのかもしれない。」
頭に手を当て天を仰ぐ。
「人は、悪い事が起きると、あの時ああしていればと後悔する生き物です。
しかし、それは間違えだと思います。
過去はどんなに悔やんでも取り返しがつかない。だとしたらこれからをいかに幸せに過ごすかが大事なのではないですか?
私は貴方からそう言われ救われました。」
柊生は思う。
ああ、そうだ永井を引き抜く時そんな話を確かにしたな。
永井の前職は誰がみてもブラックな企業だった。こんなに頭のキレる男をただの営業マンで終わらせるのは勿体無いと思った。
ある時、彼が上司の失態で駄目になった取引の尻拭いで柊生の元に頭を下げに来た。
『自分が悪く無いのに貴方が何故頭を下げなければいけないのですか?』
その時、柊生は永井に言った。
『私は、分かっていながらあの時止められ無かったんです。責任の一端は自分にもあると思います。』
あの時の永井は上司の言いなりになって、善悪の判断も出来ない状態で働いていた。
そこから、助け出してくれたのが柊生の言葉だったのだ。
「この会社に入って後悔はして無いか?」
「自分は今、仕事に生き甲斐を感じています。貴方がどん底から引き上げてくれた。」
「そうか、良かった。」
永井と話したお陰で柊生の心は決まった。
柊生はフッと笑って、
「ありがとう。そうだな、過去を悔やんでも仕方ない。これからどうあるべきかが1番大切だ。花にありのまま話すよ。」
椅子から立ち上がり、柊生は帰り支度を始める。
「貴方が奥様から捨てられたら、一緒に酒ぐらい飲みますよ。」
永井が笑いそう告げる。
「そんな事はまず無いから。」
柊生はいつもの自分を取り戻し歩き出す。
コンコンコン。
遠慮がちにドアのノックが社長室に響く。
柊生は我に帰り返事をする。
「はい。どうぞ。」
「失礼します。社長、本日の業務は終了しました…。」
秘書の永井がそう言って部屋に入って来る。
「…ああ、もう帰っていい。俺も直ぐに終わる。」
刑事からの話を聞きたいだろうに空気を読んで永井は聞いては来なかった。
「容疑者が分かった。俺の高校時代の同級生だ……。」
「一方的な私怨が何かですか?」
永井は1言えば10分かる男の事だ、全て語らなくてもお見通しのようだ。
「花にどう伝えるべきか…。」
「ありのままを伝えれば良いのでは無いでしょうか?
社長が負い目を感じる必要は無いと思います。」
「俺が適当にあしらったのがいけなかったのかもしれない。」
頭に手を当て天を仰ぐ。
「人は、悪い事が起きると、あの時ああしていればと後悔する生き物です。
しかし、それは間違えだと思います。
過去はどんなに悔やんでも取り返しがつかない。だとしたらこれからをいかに幸せに過ごすかが大事なのではないですか?
私は貴方からそう言われ救われました。」
柊生は思う。
ああ、そうだ永井を引き抜く時そんな話を確かにしたな。
永井の前職は誰がみてもブラックな企業だった。こんなに頭のキレる男をただの営業マンで終わらせるのは勿体無いと思った。
ある時、彼が上司の失態で駄目になった取引の尻拭いで柊生の元に頭を下げに来た。
『自分が悪く無いのに貴方が何故頭を下げなければいけないのですか?』
その時、柊生は永井に言った。
『私は、分かっていながらあの時止められ無かったんです。責任の一端は自分にもあると思います。』
あの時の永井は上司の言いなりになって、善悪の判断も出来ない状態で働いていた。
そこから、助け出してくれたのが柊生の言葉だったのだ。
「この会社に入って後悔はして無いか?」
「自分は今、仕事に生き甲斐を感じています。貴方がどん底から引き上げてくれた。」
「そうか、良かった。」
永井と話したお陰で柊生の心は決まった。
柊生はフッと笑って、
「ありがとう。そうだな、過去を悔やんでも仕方ない。これからどうあるべきかが1番大切だ。花にありのまま話すよ。」
椅子から立ち上がり、柊生は帰り支度を始める。
「貴方が奥様から捨てられたら、一緒に酒ぐらい飲みますよ。」
永井が笑いそう告げる。
「そんな事はまず無いから。」
柊生はいつもの自分を取り戻し歩き出す。