若旦那様の憂鬱〜その後の話し〜
ものの10分程で花は濡れた髪をポンポンとタオルで拭きながら出て来た。

「花、ちゃんと待ってるから髪は乾かしたほうが良い。」
急いでドライヤーを取りに行き花の髪を乾かす。
この2年で腰まで伸びた髪はサラサラして、触り心地は前にも増して気持ちが良かった。

TVでは、やっと暴風雨被害の報道が終わり、ウェディングドレスを着たモデルが嬉しそうにはしゃいでいる。

そうか…6月はジューンブライドだな、と頭で思いながら花に話しかける。

「花、今年こそ結婚式あげよう。もう3年も待ったんだ、まったは無しだからな。」

「…結婚式の事、諦めてなかったんだね。」
ふふっと笑う花を信じられないと言う顔で見る。

俺はドライヤーを止めて花に訴える。

「何言ってるんだ。
花が結婚式に教え子を招待したいって夢があるって言うから、先生になるのを待ってたんだぞ。結婚式を挙げないなんて、甲斐性無しの男とは結婚はさせられ無いって前に言ったよな。」

自分の事なのに、たまに兄目線になってしまうが…これは一生直らないだろうなと、自分で苦笑いする。

「ふふっ。そうだね、いつにしよっか。
暑いのは大変だから秋頃が良いかなぁ?
柊君の会社だって忙しいし、スケジュール合わせないとね。」

ふわふわと漂うように花が言うから、まだ夢見心地なのかと思いながら花の顔色を伺う。

「良し!来週から本格的に動くぞ。
一応すでに良さそうな時期は旅館の会場を押さえてある。」

「えっ⁉︎」
びっくり顔で花がこっちに振り返る。

「何、そのびっくり顔?」

「本気なんだ!って思って…。
大丈夫?仕事とか、いろいろ大変じゃない?」
今やっと目覚めたかのように言うから笑ってしまう。

「花のお花畑時間に合わせてたら、何年経っても結婚式を挙げられ無いから、強硬手段に出たんだ。とりあえず良い日を3日押さえてあるから、後で決めて欲しい。」

何の権力でもコネでも結婚式の為には使うつもりだ。俺の本気を侮るなよと花に伝えたい。

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