若旦那様の憂鬱〜その後の話し〜
「分かった。…とりあえずご飯食べよ。」
花が目覚めてくれたようで食事の許しも出る。隣にどかっと座ってやっと朝ご飯だ。

2人で手を合わせて食べ始める。

「もう、11時だよ?
せっかくの休みなのにいつの間に半日終わっちゃってる。」
今頃になって慌てて食べ始める花が可笑しくて、可愛くて笑ってしまう。

「誰のせい?」

ジロッと睨まれるので、ここは謙虚にすいませんと頭を下げる。

分かってるならよろしいと言う風に花に肩をポンポンと叩かれる。

結局俺は、花の前では従順な忠犬で、何年経ったっても変わらず尻に敷かれてるんだろうなと思うけど、それも悪くないと思ってしまう自分がいる。

「フルーツサンド美味しい。柊君も食べてみて。」
3段のスイーツタワーのおかげで花の機嫌も直ぐに直り、2人仲良く朝食、いやブランチを食べる。

「私、着物も着たいなぁ。
白無垢に憧れがあるの。
柊君の紋付袴姿も最近見てないし。」

「ああ、良いよ。一生に一度だけなんだから、花が着たいものを何着でも着れば良い。和装が良いのか?」

「ウェディングドレスも着たいけど、
みんな若旦那の紋付袴姿も見たいでしょ?」

「結婚式は花嫁が主役なんだから、俺は引き立て役に徹するよ。後、どこまで人を呼ぶかだよな。親族と仕事の関係者と友人と、それを決めるのが1番大変だから、早い段階から考えておかないと。」

そうなの?
っと他人事のように俺の顔を見て来る。

「後は?他に要望は何かありますか?」
仕事の打ち合わせかのように聞いてみる。

「えっと…。招待状とか名前のプラカードとか全部手書きで書きたいな。
後は…新婚旅行はちゃんと行きたい。
海外旅行が良いなぁ。
後…柊君がずっと側に居てくれればそれで良い。」

ふわりと俺に笑いかけてくる。
それだけで幸せを感じる俺も単純な男だなと思いながら、

「もちろん、ずっと側に居るに決まってるだろ。」
若干照れもあって目を逸らしスイーツに手を伸ばす。

暴風雨の後の、ほんのひと時幸せな時間。

昨日諦めず、びしょ濡れになって帰って来て本当に良かったとひとしきり思う。
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