若旦那様の憂鬱〜その後の話し〜
柊生が4時過ぎに到着する。

その頃には花の脳波に乱れが見られたため、
大事を取って軽い睡眠薬で眠ってしまっていた。

通常の帝王切開は部分麻酔なのだが、花の場合は脳震盪で倒れてから1ヶ月経っていない事もあって、全身麻酔になった。

「花は、大丈夫でしたか?」
手術前に話しが出来なかった柊生は、不安で仕方が無い。

女将はそんな柊生を宥め、
「いつもと変わらない感じだったわ。
大丈夫よ。陣痛もそこまでじゃなかったし、
あまり力むと脳の方が心配だからって、脳外科の先生から説明があったの。」

「もう少し早く来れたら良かったんですけど…。」

「花が薬を飲む前に、柊生君に手紙を書いたわ。」
女将からその手紙を渡される。

「…ありがとうございます。」
花から手紙なんて久しぶりだな…と思いながら柊生はそっと開き手紙を読む。


『柊君へ
私が目覚める頃にはパパとママになってるのかな?

いつも支えてくれてありがとう。
頼りない私だけど、まだまだ子供の私だけど、ママになれる事の幸せを与えてくれてありがとう。

子どもの頃の辛い日々も、お父さんから怯えて逃げる毎日も、きっと貴方に出会うための試練だったのだと思えば、決して不幸ではなかったと思うよ。

どうかこれからもずっと一緒に貴方の側にいられます様に。

この先、どんな試練が待っていても
貴方がいれば私は幸せ。
                花より』
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