若旦那様の憂鬱〜その後の話し〜
「旦那様、よっぽど疲れたみたいですね。」
点滴の様子を見に来てくれた看護師が、微笑みを浮かべで花に話しかける。

「本当ですね。普段なら人の気配でパッと起きるのに。」
花はクスクス笑いながら、柊生に握られたままの手を引き抜こうと試みる。

「この、点滴で最後だから花さんも寝て下さいね。」
そう言って看護師が病室から去って行く。

ついさっき、ずっとうとうとしていた花が目を覚ました。

気付けば夜中の1時を過ぎていた。

赤ちゃんは検査のため、明日にならないと会えない。

上手に抱っこ出来るだろうか?
母乳はちゃんと出るだろうか?
新米ママとしての不安を少し抱えながら、
隣で伏せて眠る柊生の髪をそっと撫でる。

「柊君、ずっと側にいてくれたんだね。ありがとう。」
花はそっとそう伝え、珍しく眠り続ける柊生を見つめる。

しばらくそうしていると、ビクッと身体が揺れて柊生がゆっくり頭を上げる。

頭がぼぉーっとしているのだろうか?
花と目が合ってもしばらく見つめ合う。

「…花、おはよう…。」
まだ、夢見心地でぼんやりする頭で、柊生はそう呟く。

花はふふっと笑い、
「おはよう。」
と返事をする。
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