若旦那様の憂鬱〜その後の話し〜
柊生はハッとした顔をして、 

「花⁉︎えっ…!目覚めたのか?
大丈夫なのか?痛いところは?」
柊生らしからぬ狼狽を見せ、花の頬に手を添える。

「もう大丈夫だよ。
少し眠いくらいで痛み止めも飲んだし。」
そう花が言うと、フワリと極上の笑顔を見せて柊生は安堵する。

「花、お疲れ様。ありがとう。」
額にキスをされ花はなんだかくすぐったい。

「柊君、私…寝てただけで…
起きたら赤ちゃんが産まれてたの。
妊婦さんはみんなお腹を痛めて頑張って産むのに……なんだか私、ズルしたみたい。」

寂しそうに笑うから、

「花はズルなんかしてない。
ちゃんとお腹を痛めて産んでるよ。
傷は一生残るし、切ったところが疼くだろ?
戻って来てもなかなか目覚めないから心配した。」
柊生はそっと言う。

「花、ありがとう。元気な男の子を産んでくれて。
俺は今日、世界で1番幸せ者だって思った。」
真剣な顔で柊生がそう言うから、

「柊君もいつも支えてくれてありがとう。
私の方が世界で1番幸せ者だよ。」
と、何故か負けずに花が言う。

「俺の方が1番だ。」
2人で言い合い、お互い笑い合う。

「花が側にいてくれたら俺もずっと幸せだ。手紙ありがとう。返事書いたから後で見て。」

柊生は胸ポケットから手紙を取り出し花に渡す。

「…ありがとう。」
びっくり顔の花が少し恥ずかしそうにお礼を言う。

「今、見るな。なんか手紙って恥ずかしいな。」
柊生はそう言って笑う。

「ねっ。私もなんか恥ずかしい。」
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