若旦那様の憂鬱〜その後の話し〜
「間柴先生、私、夢があって。
結婚式には園の教え子を呼びたいんです。
復帰して3ヶ月しか経ってないですし、まだ新人と言っても良いくらいなのに、子供達を呼んだりしても許されるのでしょうか?」

本気で心配になって聞いてみる。

「そんな事気にしてたの?
花先生はちゃんと先生してるし、子供達は花先生が大好きだよ。
みんな絶対行きたいって言うはずだから大丈夫。
式の日取りが決まったら僕に子供達は仕切らせて。歌か何か歌ってお祝いしよう。」
そう間柴先生が言ってくれた。

心強い味方が出来て嬉しい。
「ぜひ、その時はお願いします。」

日誌を書き終える頃、
「今晩は、お疲れ様です。」

職員室の扉が空いて柊君が迎えに来てくれる。
初めのうちは保育園の玄関で待っていたのに、園長先生に見つかって堂々と入って来てくれたら良いと言ってくれた。

「ああ、柊生君。
今日もお勤めご苦労様。」
園長先生が迎え入れてくれる。

他の先生達にも『今晩は』と、にこやかに挨拶をして柊君がこっちにやって来る。

私は急いで日誌を書きながら、申し訳ない気持ちで柊君にチラッと目線を送る。

『大丈夫、ゆっくり書いて。』と柊君が口だけ動かして伝えてくるから、

「ごめんね、もうちょっとで終わるから。」
と小声で伝える。

「大丈夫。」
柊君は私に微笑み、椋ちゃんの荷物を肩にかけ、ベッドから抱き上げて大事そうに抱き抱えてくれる。

そこに美波先生が来て、
「お疲れ様です。お迎えありがとうございます。」
柊君と挨拶を交わす。

「いつもありがとうございます。」

「椋ちゃん今日はよく寝てくれて、あまりグズリもなくて良い子でしたよ。」

「良かったです。今夜もぐっすり寝てくれると良いんですけど。」
柊君が苦笑いする。
ここ数日、椋ちゃんは夜中眠れないようで母乳を飲ませても、抱っこで揺らしてもなかなか寝てくれない。

その度に柊君が車でドライブに連れ出してくれるのだが、平日の仕事終わりに申し訳なくて……

「花先生にも教えたんですけど、同じクラスのお母さんが秘策を教えてくれたんですけど、換気扇の音が良いらしいですよ。」

「ぐずってる時に聞かせるって事ですか?」
柊君が真剣に聞いている。

「お腹の中で聞いていた音に近いのから落ち着いて寝てくれるらしいんです。」

「なるほど、今夜機会があれば試してみます。」

柊君はいつだって私と同じ目線で、同じように悩んで子育てを一緒にしてくれる。
私にとってとても頼りになる旦那様であり、良きパパである。

だけど、仕事もプライベートも完璧で彼はどこで気を緩めるのだろうか?
頑張り過ぎの柊君が心配になってくる。
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