若旦那様の憂鬱〜その後の話し〜
帰り道、私は後部座席に乗り込み、チャイルドシートに椋ちゃんを乗せる。

「柊君、仕事も忙しいのにいつも送り迎えに椋ちゃんのお世話、手伝ってくれてありがとね。でも、たまにはのんびりしてくれていいんだよ?
友達とどこかに飲みに行ったりとか、柊君の時間も大切にしてね。」

柊君は車を出発させながらチラッとこちらをバックミラー越しに見て笑う。

「俺から花と椋生を取り上げないでくれ。
2人といる時が俺の唯一の寛ぎの時間なんだから大丈夫だよ。」

「でも、夜もちゃんと寝れてないし、もっとのんびりして欲しいよ。」
私から見たら。いつだって家族の為に自分の時間を犠牲にしてるように思えてしまう。

「それは、花だって同じだろ?
仕事と子育て忙しくしてるんだ。俺ばっかりがのんびりなんて出来ないよ。
それに子供にとって幼少期は1番大事な時間なんだから、出来るだけ一緒にいたい。」

「ありがとう。柊君がいてくれて心強いよ。」
2人微笑み合う。

こんなに幸せで許されるんだろうか…。

小さい頃、実の父親に虐げられ逃げ続けてきた日々。
私には幸せな家庭を築く事なんて夢のまた夢だって心のどこかで諦めていた。

だけど今、優しくて頼りになる旦那様が居て、可愛い我が子にも恵まれて怖いくらいに幸せ。

だから、結婚式なんて望んでしまったらバチが当たるんじゃ無いかって、ずっと心のどこかで思っていた。

「柊君、結婚式しよっか。ずっと曖昧な返事しかしてなくてごめんね。」
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