若旦那様の憂鬱〜その後の話し〜
柊生は何食わぬ顔で運転を再開する。

「…柊君……警察に捕まるよ?」
息を整え、花が怒った顔で咎める。

「花にキスして捕まるんだったら本望だ。」
柊生はにこりと笑う。

「こういうのは家に帰ってからにしてください。」
プイッと窓に目を向けて、花は怒った風に見せる。

「だって、この気を逃したら、椋生がまたいつ邪魔してくるか分からないだろ?」

柊生が子供っぽく言い訳をしてくるから思わずプッと笑ってしまう。

「もう、大人気無いよ。」

「今更分かったか。
俺は花が思ってるより単純で、子供だって事だ。」

子供の頃は随分お兄さんに見えてたのに…
花は不思議な気持ちで柊生を見つめる。

大人になったのは私なのかな?
それとも柊君が子供になったの?

でも、たまにこうやって甘えてもらえるのは嬉しい。

ふふふっと花が笑う。

柊生も何だよっと思いながら、フッと笑う。

目的地は父のところなのに、終始楽しいドライブでお陰で花は緊張せずにその時を迎える事が出来た。
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