若旦那様の憂鬱〜その後の話し〜
私はホッと息を吐いて席を立ち、ロッカー室へ向かう。エプロンを脱いで服を着替えていると美波先生が入って来た。

「今日は金曜日だし、彼氏とデートでしょ?」

「デートって言う訳でも…買い物してご飯食をべるだけです。」

「それをデートって言うんだよ。」

柊君とはあっという間に結婚してしまった為、彼氏彼女として、付き合っていた期間がほんの少ししか無い。

それに柊君との事は内緒だったから、友達と恋バナをして盛り上がった事さえないのだ。
そのせいかこの手のツッコミは本当に苦手だ。

「ハイスペック彼氏さんは、今日はお迎えなの?
どこで待ち合わせ?
私も一緒に行っても良い?
2人のお邪魔はしないから挨拶だけして帰るから。」
恋バナ大好き乙女の美波先生は、モジモジする私に気にする事無く話しかけてくる。

「あれ?間柴先生とお食事なんじゃないんですか?」

「ああ、飲みには行くけど着替えてからね。
隣り町の駅で待ち合わせなの。ここらでウロウロしてると父兄に見つかって、何言われるか分からないでしょ?」

「先生って大変ですね…。」
他人事のように言う。

「花ちゃんもね。ここら辺が地元らしいけど、下手に彼氏さんとウロウロしない方がいいかもよ。あっ!でも、別にやましい関係じゃなきゃ堂々としてても良いのか。」

ハハハっと美波先生は笑い着替えを済ませる。

「朝も思ったけど、そのワンピース可愛いね。」
私が着替えたワンピースを見て美波先生が言う。

「これ、彼が買ってくれたんです。
最近出張が多くてあまり時間が取れないからって、罪滅ぼしみたいな感じなんですけど。」

「いいなぁ。付き合って三年目なんでしょ?まだまだ初々しくって羨ましい。
そんな彼氏さんに一目会いたい。」

私はスマホを見て、
「今、近くの公園で待っててくれてるみたいなので、良かったら一緒に行きますか?」
思い切って誘ってみる。

「やったぁ、行こ行こ。」
テンションの高い美波先生に少し戸惑い、はにかみながら後ろをついて行く。

「お先に失礼します。」
「お先に失礼まーす。」
2人で頭を下げて職員室を後にする。

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