若旦那様の憂鬱〜その後の話し〜
「良い先輩だな。さぁ、乗って。」

柊君はわざわざ助手席のドアを開いて私を乗せ、缶コーヒーを飲み干して、近くのゴミ箱まで小走りで捨てに行ってから運転席に乗り込む。

「ごめんね。少し待たせちゃった?」

「いや、大丈夫だ。早く会いたくてちょっとフライング気味に出て来たから。」
爽やかな笑顔で柊君が言う。

「昨日の分の仕事、押してたんじゃないの?大丈夫?」
それでも無理させたんじゃないかと、心配になってしまう。

「俺が会社にいても事務仕事くらいしか無いから大丈夫。他の社員が上手くフォローしてくれてる。」

社長業って事務仕事は少なめなのかな?
と一瞬思ってしまうけど、きっと仕事の事で変に気に病まないようにと、私を気遣ってくれているんだと理解する。

「今日も大変だった?」
柊君が顔を覗き込みながら聞いてくる?

「大丈夫だったよ。困った事も特に無かったし、お昼寝もほとんど良い子で寝てくれたしね。」

「そうか、良かった。」

そう言って、今日1番の笑顔を見せてくれる。

私の頭を優しくヨシヨシして、シートベルトまで着けてくれるから、顔が近くてドキッとしてしまう。

ついでに、と言うようにチュッと唇にキスを落としていくから、思わずビクッとしてしまう。

「何でそんなに驚くんだ?」
可笑しそうに笑いながら柊君は車を出発させた。
< 27 / 190 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop