若旦那様の憂鬱〜その後の話し〜
その後、商店街のクリーニング屋に寄り背広を出し、少し遠出して2人、お気に入りの洋食屋さんでオムライスを食べる。

結婚しててもこれはデートって言って良いのかな。オムライスを頬張りながらふと思う。

「誰も獲らないからゆっくり食べろよ。」
柊君は心配しながら水を渡してくれる。

そんな何気ない瞬間を幸せだな、と思う。

「さっき送って来てくれた先輩にはどこまで話してるんだ?」

「付き合ってる彼氏がいるって事だけは言ってあるけど、さすがに結婚してますとは言えなかったよ。」

「だけど俺の事も知らなそうだったし、意外と大丈夫なんじゃないか?」

「美波先生は、隣町の出身だからたまたま知らないだけだよ。」
何より私は、自分のせいで柊君の評価が落ちてしまう事を恐れている。

結婚式に教え子を呼びたいって言ったけど…
どうしよう。その後のみんなの反応が怖いな。

「結婚式の事、心配してるのか?」
柊君はいつも直ぐに何でも悟ってしまう。

「柊君て、何で何でも分かっちゃうの?
もしかして、人の心が読めるとか?」
いつも不思議に思っていた事を、つい聞いてしまう。

「花にだけだよ。
素直だから顔に何でも出るし、しかも俺は花の事を昔から良く観察してたから、何と無く分かるんだよな。」

「隠し事、出来ないね。」

「俺に隠し事なんて100年早い。直ぐに見抜いてやるから覚悟しろよ。」
本当に見抜かれそうだと内心ドキッとする。

2人、楽しく夕飯を食べて近くのスーパーに戻り買い物をする。

束の間のデートを楽しみ、思いがけず楽しい一日になった。
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