若旦那様の憂鬱〜その後の話し〜
明日は土曜だけど、柊君の公演会が隣の県である為朝から仕事で出かけてしまう。

それを寂しく思いながらベッドに潜り込む。

柊君は明日の打ち合わせで書斎に入って電話中だ。早く寝てしまおうと目を閉じる。

「花、起きてる?」
スッと寝室に入って来た柊君は片手にスマホを持っている。

「…どうしたの?」
不思議に思って柊君の顔を見上げると、

「明日の公演会だけど、花も一緒に行かないか?」

私の横に寝そべって柊君が問う。

「でも、私がついて行っても邪魔じゃない?」

「島津が…あっ、ホテルマンの島津悟。
今、俺の会社の仕事を手伝ってもらってるんだけど、公演会の司会者で今回一緒に行くんだ。そいつが是非奥さんもって。」

「私も?でも、公演会の後だってお食事会とかいろいろあるんでしょ?
柊君のお仕事の邪魔だけはしたくないの。」

「邪魔な訳が無いだろ。
花とは出来ればいつだって一緒に居たいし、地方に行っても正直1人で置いて行く事に不安を感じている。
この前みたいにいつ災害が起こるかなんて、分からないだろ?
仕事も、県内限定にしたいなと思って島津にボヤいたら、それならいっそ奥さんを連れてけば良いんじゃない?って言われてさ。」

「私にも何かお仕事ある?」
私としては何もしないでついて行く事に引け目を感じる。

「花は、側にいてくれれば良い。
それだけで癒されて穏やかな気持ちになれるから。それに、そろそろ紹介しておいた方が良いかと思うんだ、妻の花ですって。結婚式もあるだろ。」

「そっか。…じゃあ、お邪魔にならないようにするね。」

「着いて来てくれるのか?」

こくんと頷く。
柊君はありがとうと言ってぎゅっと抱きしめてくれる。

「荷物詰めなくちゃ。」
おもむろに起き上がり、荷物を詰める為ベッドから出ようとする。

「花の荷物は全部詰めておくから気にしないで寝ててくれ。」
ベッドに戻され、布団をかけられポンポンと頭を撫でられる。

「下着と服は適当に入れておくから、細かいものは明日入れてくれれば良い。」

「えっ⁉︎えっ?待って、下着は恥ずかしいよ…」

「何を今更。花の下着なんて何百回と見てるんだから、気にするな。」

何百回もは盛り過ぎじゃない?
と、思いながら。眠気には勝てずいつの間にか眠ってしまっていた。
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