若旦那様の憂鬱〜その後の話し〜
「あ……荷物。」

「俺の思い付く限りで入れてみたけど、足りなかったら後で買えば良い。」

「はい…。」
反応が薄い花に同情して、柊生は軽く笑う。

「眠かったらまだ寝てたらいいよ。」
と伝える。

「…柊君って…カッコいいよね。」
花が脈略無く突然言うから、

「何?どうした、夢でも見たのか?」
突然のお褒めの言葉にさすがの柊生も動揺する。

「仕事も出来るし、しっかりしてるし大人だし。頼りになるし、私の旦那様には勿体ないくらい。」

「…何だ?どうした?誉め殺しか?」

まだ、覚醒し切れてなくて、お花畑をさまよってるのか?と柊生は思う。

話しの意図が読めず当惑しながら言葉を探る。
「花には俺がそんな風に見えてるのか?
嬉しいけど、それは表の取り繕った姿であって、本当の俺じゃ無いだろ。
裏の俺は花に対して心配症で過保護で、口煩くて…犬っぽい?とこがあって…わがままな俺様だろ。
後、無理させて困らせるし、こうと思ったら曲げない頑固なところもある。」

ガバっと花が今起きたかのようにこっちを見る。
「そんな風に思った事無いよ。」
びっくりした顔をして柊生を見る。

「裏の顔の柊君は全部可愛くて大好きだよ。」

「そっか…良かった。…で?この話しの結末は何?」

「ただ…こんな何にも無い私が、柊君の隣に並んで立って大丈夫なのかなって、ちょっと思ったりして。自信無くなっちゃうんだよ。」

柊生は急に運転のスピードを速めたかと思うと、車線の変更をして近くのパーキングエリアに入って行く。

花は目を丸くして、車を駐車するまで固まったままだ。
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