若旦那様の憂鬱〜その後の話し〜
「ありがとう、元気出たよ。」
花がニコッと笑って柊生を見つめる。

「俺も、ありがとう。
改めて花に出会えた幸運を神に感謝したい。」

「大袈裟だよー。」
花が笑うから柊生も笑う。

「安心したら腹減ったな。…何か、このまま公演会なんて行かずに逃げるか。」
ふふっと花は笑う。

柊君が柊君らしく無い事を言ってると思ってしまう。

「柊君はそんな責任感のない事出来ないでしょ。」
柊生の胸元に顔を埋めてそっと言う。

「自分のマジメ腐った性格が嫌になる時がある。康生みたいにもっと楽に生きられればいいんだけど。」

「大丈夫。柊君のそんなところも大好きだから。とりあえず、お腹空いたね。何か食べようよ。」

柊生も、そうだなっと思いながら、

「その前に。」
と、花の顎に指を添えて上を向かせたかと思うと、そっとキスを落とす。
ゆっくりと味わうように角度を変えて、

「……っあ……。」
花は、車の中といい、ここは公衆の面前だと思うから恥ずかしくて…息を乱しながら何とか離れようと試みる。

「柊君…誰かに……」
柊生に伝えようと思うのに、開いた唇の隙間から入り込んだ舌によって酔わされ、惑わされ考える暇を与えても貰えない。

頭がボーっとなって柊生の事しか見えなくなるまで長いキスをした。

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