若旦那様の憂鬱〜その後の話し〜
「花からキスして。そしたら元気になりそうだ。」

花にとっては相当ハードルが高いお願いをされる。

「えっ…?」

花はしばらく思考が止まってしまう。

でも、今日着いて来た事に意味があるのならば、柊君を元気付ける為なのかもしれない。

花はそう思い意を決して柊生を見上げる。

2人目が合い、鼓動がドキドキと高鳴る音が体中に響き渡る。

花は一所懸命背伸びをして、柊生の頬に両手を添える。柊生が少し屈んでくれるから、急に接近して少し怖気づき目線が泳ぐ。

思い切って、柊生の唇に唇を重ねる。

パッと離れるが、顔から火が出そうなくらい真っ赤になって俯いてしまう。

「ありがとう、花…ごめん、でもちょっと足りない。」

そう嬉しそうに笑って柊生は、花の唇を求めて顎に指をかけ上を向かせる。

急激に繋がれた唇が熱い。

優しく、そして深く。
柊生は少し強引に唇を割り、舌を絡ませ交われば不思議と気持ちが落ち着いてくる。

花は俺のものだと言う優越感にも似た感情。

やっと離れた唇をペロリと舌舐めずりして、余韻を味わう。

体の底から湧き上がる力と自信を取り戻す。

「花、ありがとう。」
そっと抱きしめ気持ちを整える。

乱れた息を落ち着かせながら、花は柊生に微笑みかける。

「ごめん、リップ取れちゃったな…。」
そう言いながら優しく花の唇を、親指でなぞる。
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