若旦那様の憂鬱〜その後の話し〜
トントントントン

ノックの音が控え室に響きわたる。

花はびっくりして柊生からサッと離れてドアをパッと見る。柊生を見れば、いつもの落ち着き払った彼に戻っていたからホッとした。

「花、座って待っていて。」
柊生から耳打ちされて、花はうんと首を縦に振って答える。

ソファにそっと腰を下ろし、未だドキドキしている心臓を落ち着ける為、ひたすら深呼吸をして整える。

柊生は少し乱れた髪を手櫛で、整え足速にドアに向かう。

「お待たせしました。」

と爽やかな笑顔と共にドアを開ける。

「こんにちは。本日は、お忙しい中こちらに足を運んで頂きありがとうございました。
主催者側の責任者、中村と申します。
今日は一日よろしくお願いします。」

恰幅の良いにこやかな中年男性が、微笑み挨拶をする。

「こんにちは。30周年という記念すべき日にお呼び頂き大変嬉しく思います。
本日はよろしくお願いします。」
柊生が挨拶をする。

「そろそろリハーサルの方をお願いしてよろしいですか?」

「はい、分かりました。
花ちょっとリハーサルに行ってくる。ここで少し待ってて。」

部屋の中を振り返り柊生はそう言って部屋を出る。

「はい。」

小さく返事をして手を振って見送る。

柊生も軽く手を振り返してくれた。

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