若旦那様の憂鬱〜その後の話し〜
「凄いな、さすが俺の花。」
柊生が舞台袖なのにぎゅっと抱きしめられてそう呟く。

「しゅ、柊君、スタッフの人が見てるから…。」
恥ずかしくてパッと離れる。

柊生は満面の笑みで花の頭をヨシヨシと撫ぜる。

「柊君の受け売りだよ。」
そう言って花は苦笑いする。

「それでも咄嗟に返せたのは凄い事だ。
だけど何の打ち合わせと無く、素人相手にアドリブ入れるのはあり得ない。島津さんには後で抗議しておく。」

そう言って柊生自身で、花を来客席へ案内してくれる。

バレないかとヒヤヒヤしながら、薄暗い来客席の一角に座り、やっとホッと息をついた。

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