若旦那様の憂鬱〜その後の話し〜
「俺も一緒に見に行くよ。柊生君が人を惹きつけてくれてる間に、思う存分食べようか。」
そう言って、お皿を2人分持って花が乗せやすいように、低く下げてくれる。
花は終生に申し訳ないなと思いながらも、
食欲には勝てなくて、ちょっとだけ、とお皿に乗せていく。
「花ちゃんは、今年卒業したんだってね。
今は旅館業を手伝っているの?」
「いえ、私は4月から保育士として近くの保育園で働いているんです。」
「そうなんだ。
柊生君も立ち上げた会社で忙しそうだし、旅館の仕事はもうしてないの?」
「いえ、まだ席は旅館に置いてるんです。
でも忙しくてなかなか行けては無さそうですね。」
花は舞台の柊生を心配そうに見つめる。
「週末も何かと休めないし、花ちゃんは寂しくない?」
「私は大丈夫です。
何もお仕事の事は手助けが出来ないので、
せめて柊君が、あっ…主人が働きやすい環境にしてあげたいなと思ってはいます。」
何も役に立てない自分がいつも歯がゆいと思ってしまう。
「花ちゃんは出来た奥さんだねー。
柊生君が溺愛するのも良く分かるよ。」
「全然です。まだまだ心配ばかりかけていますし…。」
「でも、兄だった人が今は夫ってどうなの?
上手くいってる?」
突然、確信を突いた事を言ってくるから、
ハッと顔を上げ島津を見上げる。
「ずっと…私の片想いだったんです。
だから、今はとても幸せです。
お仕事が忙しくても帰って来てくれるだけで、とても嬉しいですし。」
頬をピンクに染めて、照れながら話す花がとても可愛いと島津は目を細める。
「そっかぁ。付け入る隙は無さそうだなぁ。」
花はそういうのに疎いから、どう言う事?
と怪訝な顔で首を傾けるけど、島津は微笑みを浮かべ近くにある椅子を指差し、座ろうと花を促す。
「はい、どっちの皿が花ちゃん?」
花は指差し微笑む。
「ほとんどスイーツだけだけど大丈夫?」
甘いものが苦手な島津は若干驚いている。