若旦那様の憂鬱〜その後の話し〜
「俺は無理だなぁ。胃がもたれそうだ。」

島津が苦笑いして、キッシュやテリーヌなどの惣菜わ片っ端から食べていく。

「本当にお腹空いてたんですね。」
笑いながら花も小さなショートケーキの苺を食べる。

「花、ごめん…腹減ったよな。」
振り返ると舞台から戻ってきた柊生が足速に近付いて来る。

「島津さん、僕の嫁を口説かないで下さいね。花は免疫がないからあなたみたいなタイプは本当に危険なんですよ。」

柊生はそう言いながら爽やかに笑うのだが、目は笑っていない事を花は見抜く。

「柊君もお腹空いたよね、何か持って来ようか?」
花が立ち上がろうとするので、柊生は大丈夫だと手をかざす。

「僕は良いから花が食べ終わったらそろそろ部屋に戻ろう。」
柊生が花の隣の椅子に座り、さすがに疲れた素振りを見せるから、花は慌ててパクパクとケーキを口に運ぶ。

「ちゃんと味わって。」
柊生はハハッと笑いながら、花の背中をヨシヨシと優しく撫ぜる。

「じゃあ、そろそろボディーガードはお役目ごめんかな。」

島津はそう言いながら、空になった皿をウェーターに渡しシャンパンを3人分注文する。

すかさず柊生が花の分はノンカクテルに変えてくれる。

「花ちゃんアルコール駄目なんだ。」

「私、直ぐ真っ赤になって眠くなっちゃうんです。」

困った顔をしながら話す花が可愛らしいなと島津は思いながら、

「これは柊生君も心配になるね。」
と柊生に目を向ける。
柊生は苦笑いで花を見ながら、

「だから、連れ歩きたくないんです。
だけど独りで留守番させるのも心配で、夫としては悩みどころですよ。」
柊生の本音が見え隠れする。

花は分かっているのかいないのか、皿の上のスイーツを美味しそうに堪能している。

「花ちゃんの事、遠目で見てた若手の社員達に話題になってたから、柊生君の為に守ってあげてたんだからね。俺に感謝してくれないと。」

笑いながら島津が届いたシャンパンを持って
2人に乾杯をする。

「島津さんはご結婚は?」

プライベートを聞く事なんて今まで無かったなと柊生は思いながら、島津という男に始めて興味を持ち向き合う。
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