若旦那様の憂鬱〜その後の話し〜
「おはよう。花、朝からどんな夢でも見てたんだ?」

「おはよう……。
柊君が、高校生で…私はまだ小学校だった頃の……夢…。」 

まだ花は頭が追いつかなくて…
ああ、あの憧れのお兄さんが…今は、私の旦那様…。
頭の片隅でぼんやりと思う。

「あの頃の花にとって俺は、単なるお菓子をくれるお兄さんでしかないんだろうな。」
自傷的にそう言って、フワッと花を優しく抱きしめる。

花は意識がハッキリしてきたと同時に、自分がほぼ裸だと言う事に気付く。

かろうじてホテルのパジャマの上だけ着た状態で、下着も一切つけていなかった。

昨夜の事情を思い出し真っ赤になって、離れようと柊生の胸を両手で押す。
だけど鋼のような体はびくともしなくて、逆に脚まで絡ませてくるから焦ってしまう。

「しゅ、柊君、離して…。」

「花が逃げようとするから悪い。」

「だ、だって、柊君裸だし、恥ずかしい。」

「下は履いてる。上は花に貸してるからだろ。」

そのタイミングで花のお腹がグゥーと鳴る。

もう、私のお腹…花は恥ずかしくなって両手で顔を隠す。

「さすがに腹減ったな。」
花の頭をポンポンと撫でて、柊生はやっと花を解放する。

この、ポンポンするのは昔から変わらないなと花は思う。
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