若旦那様の憂鬱〜その後の話し〜
ゴロゴロゴロゴロ……

また雷の音が聞こえる。
さっきより近付いて来た気配がする。

花はビクッと身震いして、慌ててお弁当をパクパクと食べ始める。

「消化に悪いからゆっくり食べろよ。」
柊生はさっき自分に言われた事をすかさず言って笑う。

「早く食べて早く寝よ。」
花は既に寝るに限ると悟って、見向きもしないでひたすら食べ進める。

柊生は構ってくれない花に若干面白く無いなと見つめ、不貞腐れながらバクバクと食べ進める。

突然、

ドカーン!!

と大きい音がして地響きのように建物が震える。

「きゃっ!!」
と花は小さく叫び柊生に抱き付く。

流石の柊生も笑ってはいられず、花を抱きしめ返す。

部屋が、一瞬にして暗くなる。

「雷が避雷針に落ちて、停電したかもしれない。」
柊生は懐中電灯を取りに行こうと立ち上がる。花もすかさず立ち上がるが、柊生の手を離せないでいる。

暗闇は怖いから離れなく無い。

ヨイショっと軽々花を肩に担ぎ上げる。
「わっ⁉︎」
と、びっくりして慌てて肩にしがみつく。

「暗くて危ないからこれでちょっと辛抱して。」
花を担ぎ歩き出す。

「怖かったら目を瞑ってろ。
キッチンの収納棚に懐中電灯がある筈だからそこまで行く。
このマンションには自発発電が備わっているから、ちょっと我慢したら電気は戻るから心配するな。」

そう言って手探りでキッチンまで歩いて懐中電灯を見つけ出し、花をそっと下ろす。

ドーン バリバリバリッ……

雷がまた轟いて花を驚かす。
涙目になって花は柊生にひたすら張り付く。

「とりあえず花が言うように、歯磨きしてベッドに入って寝てしまおう。」

フッと笑って花の手を取り、懐中電灯の灯りを頼りに洗面所に行く。

2人、暗闇の中で歯を磨き、ベッドに潜り込む。
< 7 / 190 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop