若旦那様の憂鬱〜その後の話し〜
「…しかし、今からこの時間に突然会いに行くなんて…子供も寝てるかもしれませんし…。」

遠藤先生は戸惑い、躊躇して、世間体を気にし始める。

「貴方の愛はその程度ですか?
私だったら全てを投げ捨ててでも直ぐに追いかけますけどね。」

確かに柊君、北海道まで追いかけて来たよね…。

意外と後先考え無い情熱派なんだよね。
ううん…きっと用意周到に考えた上で行動してるのかも。

そんな事を考えながら2人のやり取りを聞いていると、

「花先生はどう思いますか?」
不意に遠藤先生から話を振られてびっくりする。

「わ、私ですか?」

「突然今から言って、話し合いたいって大丈夫ですか?」
遠藤先生の真剣な眼差しに少し戸惑いながら、

「私だったら会いに来てくれたら嬉しいです。…でも話し合いたいって言われるのは心の準備が出来てないと…辛いかも…。」

率直に思ったまま話す。
あの時、実父から逃げるように北海道へ行った時、私、なんて思ったんだっけ?

空港で柊君を見た時『うわ。怒られる』って思ったんだよね。

だけど、柊君は見つけられて良かったって抱きしめてくれた。
その後、もう大丈夫だって、逃げなくてもちゃんと解決してるって安心させてくれたんだ。

「あの、きっと、戻って来ても大丈夫だよって安心させてあげたら良いと思います。」

あの時の自分の気持ちを思い出しながら話す。

「不安を取り除いてあげられるような事を言葉にして伝えるべきです。
今、欲しいのは話し合いでは無く、信頼関係の修復なんだと思います。そうすればお互い素直になれるんじゃ無いでしょうか?」

「なるほど、凄い!花ちゃんそう言う事だよ。」
美波先生も納得したようにそう言う。

「男の人ってさ。
俺の話を聞いてくれってなりやすいけど、結局聞いたところで体良く丸め込まれた感じになっちゃうんだよね。
こっちが我慢する事になるって言うか…。

どっちかが折れなきゃ解決出来ないでしょ。
難しいけど…
女からしたら話し合いなんて要らないんだよ。大丈夫、安心出来るって言う信頼感が必要なんだよね。」

うんうんと頷きながら美波先生は同調してくれる。
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