若旦那様の憂鬱〜その後の話し〜
「花先生、モテますからね。」

遠藤先生が何気無く言うが、急に柊君からのオーラが冷んやりした気がしてハッとして見つめる。

「とんでもない、全然ですよ。」
慌てて否定してみるが、

「参観会とかやたらお父さんが増えたと思ったら、花先生見たさらしいですよ。」

「いやいや、そんな訳無いですって。」
どんどん柊君の眉間に皺がより始めるから、
気が気じゃ無い。

「遠藤先生、ここら辺ですよね?」
柊君が車の速度を緩めて道路脇に車を停める。

「あっ、ありがとうございました。
本当に勇気をもらった気がして、一橋さんに今日会えてよかった。
花先生もありがとう。」

「良い方向に向かう事を祈ってます。」
私に出来る事は健闘を祈るしか無い。

遠藤先生は車から降りて一礼し、走って道の向こうに消えて行った。

どうか、かけ間違えたボタンが元に戻りますように。
手を合わせて祈りたくなるくらいの気持ちで、遠藤先生が消えていった道をいつまでも見つめていた。
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