若旦那様の憂鬱〜その後の話し〜
病院の廊下を柊生に手を引かれ歩きながら、花は少し前を歩く柊生の背中を見つめる。

もし、私が妊娠していたら柊君どう思う?

戸惑う?嬉しい?
それともタイミングが悪いって思うんだろうか?

私は…もし妊娠してたらやっぱり嬉しい。

仕事の事を思うと少し不安はあるけど…まだまだ子供みたいな私が母親にになれるのか…心配ではあるけど…

産まないなんて選択は無い。
絶対、産みたい。柊君の子、可愛いに決まってる。

柊生の背中を見つめながら花は思う。  

突然柊生が足を止めるから、

「きゃっ。」
と、花は柊生の背中に軽くぶつかってしまう。

くるりと向きを変えた柊生に両肩を支えられて2人見つめ合う。

「花、俺はもし花が妊娠してたら、嬉しいしか無いからな。」

柊生の真剣な視線に花はホッとする。

「私も、嬉しいに決まってる。」
2人、フフッと笑い合う。

お互い、ホッとして気持ちが落ち着く。

柊生が他人の目も気にせず、また花の手を握りしめて歩き出す。

ドキドキとワクワクと、少しハラハラした気持ちが入り混じりながら、花もギュッと握り返えした。

婦人科の前の長椅子に座って待っている間、2人ソワソワした気持ちで落ち着かない。

待合室には、お腹の大きな妊婦さんや赤ちゃんを抱いたお母さん、夫婦で待ってる人も結構いる。

柊生はタブレットを開く事も無くただ、花の手を握り順番を待つ。
そしてフーッと息を吐く。

不思議に思って花は柊生を見る。

「…ヤバい。緊張してきた。」
そう柊生が呟くから、花だってつい柊生の手を両手でギュッと握り締めてしまう。

「私も緊張して来た…。」

2人で見つめ合い、一緒に深呼吸する。

フッと笑う柊生に、1人じゃ無いと励まされた気がして心が軽くなる。
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