若旦那様の憂鬱〜その後の話し〜
「一橋さん。」
名前が呼ばれ、花は柊生の手をパッと離して立ち上がる。

「俺も行く。」
と一緒に柊生も立ち上がる。

花はこくんと頷き、緊張の面持ちで診察室に入った。

その後、色々な検査を受けて最後にまた診察室に呼ばれた。

その頃には2人緊張のピークで、まるで高校の合格発表の日の様だと花は頭の片隅で思うほどだった。

「ご妊娠されてますよ。」
にこやかに女医からそう聞かされた時、花は一瞬呼吸をする事を忘れるくらい、いろんな感情が生まれ言葉を失う。

「ありがとうございます。」
いち早く反応したのは柊生で、満面の笑みで頭を下げている。

花も慌てて「ありがとうございます。」
と言う。

「ですが、ご妊娠されて2ヶ月くらいです。
まだ、心拍が確認出来ないほど小さくて…また3週間後に来ていただき検査したいと思います。」

そう言って、1枚のエコー写真を渡される。

「この、白く写ってるところが胎嚢になります。この時期はとても繊細で、この段階で流れてしまう方も多いので安心は出来ません。」

そう女医から告げられて、また緊張する。

「どのように過ごせば…。」
心配顔で柊生が聞く。

「普通に生活なさって下さい。激しい運動や身体に負担がかかる事を避けて、十分な睡眠と3食のご飯をちゃんと取って下さいね。
あと、葉酸と鉄分が不足しがちですので、サプリで取る様にして下さい。
特に花さんは貧血傾向があるため、鉄剤を処方しますね。」

その後もいろいろ説明があり、食欲が落ちている花に対して食事の取り方やいろいろな指導をもらう。

柊生は隣で真剣に先生の言葉を聞き、メモまで取っていた。

2人言葉少なく事務的に会計を済ませ、やっと車に乗り込んだ時には午後一時を回っていた。

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