若旦那様の憂鬱〜その後の話し〜
「ごめんね、心配させちゃって。
全然、タクシーとかバスだって平気だったんだけど、柊君が過剰に心配しちゃって。
彼女とかとデートだった?」
「今はフリーだ、嫌味か?
兄貴のせいで仕事が忙し過ぎて、恋愛どころじゃ無い。」
不貞腐れた顔で康生は車を走らせる。
「兄貴も忙しいよな、土日も仕事なんて。
会社も軌道に乗ったみたいで良い事だけど、
これじゃ花が寂しいだろ。
週末とか実家に帰ってこれば?」
康生は康生なりにいつも可愛い妹を心配し、何が力になりたいと思っている。
「ありがとう。柊君は、出張でも必ず帰って来てくれるから大丈夫だよ。
でも、仕事が夏休みに入ったら久しぶりに実家に帰ろうかな?」
「おお、帰って来い。
兄貴なんて気にしないで、近いんだからもっとバンバン実家に来ればいいんだ。」
康生にしてみれば、結婚する前は、家に帰れば花が必ず出迎えてくれた日常が恋しくもある。
花は、たわいも無い話をしながら気も紛れ、気持ち悪くならずに無事病院に到着した。
「ありがとう。帰りは何時になるか分からないし、タクシーだって大丈夫だから帰ってくれて良いよ。」
車が送迎ロータリーで停まり、花は気を遣って康生に言う。
「いいよ、俺の事は気にするな。
近くのショッピングモールで暇つぶしてるから、終わったら連絡しろよ。
兄貴に花を置いて帰ったなんて言ったら、殺さねかねない。」
「ふふっ、大袈裟だなぁ。私だってもう、大人なんだから大丈夫だよ。」
相変わらず過保護な兄弟だなぁ、と微笑みながら車を降り花は康生に手を振って病院内に入る。