若旦那様の憂鬱〜その後の話し〜
産婦人科の待合室は1人だと妙に落ち着かない。

近くにあった本棚から雑誌を手に取りパラパラとめくる。
妊婦の読む雑誌のようで、いろいろ参考になりそうな悪阻の時の食事の仕方や、体験談などが載っていた。

へぇ、と感心しなながらページをめくる。

ふと、1つのページに目線が止まる。

『妊娠中の夫婦の為の夜の触れ合い』についての赤裸々な記事で、花は思わず周りの目が気になってしまう。

さすがにじっくりは読めなかったけど、こんなふうにしてるんだ。とか、安定期に入れば大丈夫なんだ。とか、いろいろ知る事が出来た。

後で本屋に寄って買おうと心に決める。

熱心に雑誌を読んでいると、スマホが震え着信を告げる。

見れば柊生からで、今から講演が始まると言う。
花の体調を心配する内容と、2時間弱の登壇だけど気にせず診察結果が分かり次第メールを入れるように、と念を押すメッセージだった。

どこにいても、遠く離れている時でさえも、過保護な旦那様は花の事を思い大事にしてくれる。
今は1人だけど、決して1人じゃ無いと思い心が暖かくなった。

『今、待合室で後、5番目。
大丈夫だよ。1番に連絡するからね。』
と、花はメッセージを打ち柊生を安心させる。
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