乙女と森野熊さん


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夜、既に時間は十時過ぎ。

テレビを見ながらスマートフォンをいじっていたらメールの着信。

熊さんから今から帰るとのメールだった。

熊さんは必ず帰るときにメールをくれる。今日は遅くなるから晩ご飯はいらないと言われているけれど、そういう時は念のためカレーとか豚汁とか、温めればすぐ食べれるような夕食にしておく。

そうすると熊さんがお腹が減っているときにすぐ用意してあげられる。

そういう事は気にしなくて良いよと言われているけれど、どうせ私の分は作るのだからと押し切ってしまえば熊さんは何も言わない。ちなみに今日は肉じゃがだ。

でもそんなことより今日はずっと熊さんに会うのが心配で落ち着かなかった。


「ただいま」


「お帰りなさい」


ドアのチャイムで急いで玄関に行けば、お昼会った時にしていたネクタイは既に無く、シャツのボタンが一つ外されている。

おそらく仕事の時だけ締めて、帰るときは外すのだろう。

私は熊さんを見上げてから勢いよく頭を下げた。


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