乙女と森野熊さん
「乙女ちゃん」
「はい!」
ビシッと返事をすると、熊さんの表情は変わらないまま、
「聞きたいことがあるんだろう?本田も色々話したのかもしれないが」
タオルで髪の毛をガシガシと拭きながら熊さんはソファーに座り私を見る。
こっちに来いという事だとわかって、私は冷たい麦茶を二つのコップに入れてソファーに持って行き熊さんに一つ差し出した。
「ありがとう」
私がうん、と答えて隣に座るけど、どう切り出して良いのかわからない。
熊さんはただ黙っていて、私はさすがにこの空気が耐えきれなくなり切り出した。
「熊さんって警視なの?」
「あぁ」
「本田さんが同期で最速昇進って」
「そうか」
「知らなかったの?」
「そう言えば言われたような気がする」
思わずずるっと身体がずれて、熊さんが表情も無く私に視線を向けた。