乙女と森野熊さん

「・・・・・・幸せな人と関わる仕事じゃ無い。だけど必要で大切な仕事だ」


麦茶を持ち、熊さんは前を向いたまま言った。

詳しいことは私に話せないけれど、熊さんなりの精一杯の情報公開なのかもしれない。

いつも無表情で何を考えているかわからない熊さんだけど、仕事のことになると目つきが変わる。それを見る度ちょっと格好いいなと思ってしまうのだ。


「私は家でいびきかいてたり目一杯ケーキ頬張る熊さんも、お仕事モードの熊さんもどっちも好きだよ」


熊さんが私を見て、少しだけ目が細くなる。


「ありがとう」


その低く落ち着いた声を聞いて私は嬉しい。

いつか熊さんはもっと私に秘密にしていることを教えてくれるだろか。

大きな身体を少し丸めて小さく見えるグラスで麦茶を飲んでいる熊さんの横顔を見ながら私はその日がいつなのかなんて考えていた。
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