乙女と森野熊さん
「現実はそんなに甘くない。私の人生を本当に助けることは出来ないのに、死ぬのは駄目だなんて誰が言えるんだろうね。
そんなのは偽善だと思うだけだよ。
野良猫が可哀想だからと責任もてないくせに餌付けする人みたいに、自分の自己満足のために、人の人生にあれこれ言わないで欲しい」
血を吐くような言葉を聞いて、あの日のことが鮮明に蘇る。
あの葬儀の時、私は親戚の誰からも嫌がられ、必死にスマートフォンで調べても私は施設に入るしか道が無かった。
その施設も高校卒業と同時に追い出され、その後の生活が金銭面でも心身でも非常に厳しいものなのだと書いてある記事を読んでぞっとした。
勉強が苦手、身長を言われるのが腹が立つ、でも家族も優しくて学校も楽しい。
安穏と生活していた自分では考えられない場所に今いるのだとわかって絶望した。
そして思ったのだ、どうせなら一緒に死なせて欲しかった、と。
一人残されるくらいなら、みんなと死にたかった。いや、まだ間に合うだろうか、後を追いかけようか、とそこまで思っていた。
そこを引き留めてくれたのが熊さんだ。
私は熊さんがいなかったらどうなっていたのだろう。
そして目の前の真奈美には熊さんのような人がいない。
何もかも、支え包み込んでくれる存在が。